正多面体群の部分群の視覚化
はじめに
これはISer Advent Calender 2021の7日目の記事です。
この記事では正多面体群の部分群にて視覚的な意味づけをします。
部分群の定義や巡回群、交代群について聞いたことある程度の人なら誰でも読めるようにしているつもりなので群論に慣れている方は最初の方は読み飛ばしてもらって構いません。
正多面体群とは
正多面体は正四面体、正八面体、正二十面体、立方体、正十二面体の5つあり、これらはとても対称性がいい立体です。
これら正多面体を空間上で回転させて(鏡映はNG)自分自身と一致するような回転について群を考えたものが正多面体群です。
正確にいうならSO(3)の部分群としてその正多面体を不変にするものといった方がいいのですがまあいいでしょう。
また、正八面体と立方体、正二十面体と正十二面体の双対性*1からこれらの正多面体は同一のものになります。
正多面体群の部分群の視覚化とは
これがこの記事でやりたいことで、正多面体群は正多面体の回転対称性を全て表しているわけですから、正多面体からその対称性を一部取り除けばその図形の回転対称性はその正多面体群の部分群と完全に対応するのではないか、というものです。
詳しくはこれから述べていきますが、例えば正四面体のある頂点1つを動かさずに正四面体を保存する回転は正四面体群の部分群となっているのではないかということです。
正四面体群について
正四面体群は4次交代群と同型になります。これを示すのはこの記事の本質ではないので省略します。
4次交代群とはなんぞやという人にちょっとだけ説明を加えておくと1,2,3,4の並びの入れ替えのうち、2つの数字を入れ替える操作を偶数回行ってできるものです。
4次正方行列の行列式を求めるときに使うsgnが1のものといった方がわかりやすいかもしれません。
正四面体群の視覚化
そもそも正多面体群は群を視覚化しているものなのでここでそれを示しておきます。
の元は上で述べた通りなので正四面体の各頂点に数字を割り当てて、を対応する数字を入れ替えるような回転とみなします。
例を挙げるとは以下のように正四面体を回転させる元と解釈します。
の部分群
の部分群についても求めるのはこの記事の本題ではないので結論だけ書きます。*2
共役による同値類の代表元だけ書くと
となります。(自明な部分群は省略)*3
の視覚化
この回転については頂点1と頂点2からなる辺(以下これを辺12と書く)と辺34については同じ位置に止まるので以下の図形を考えればこの図形を不変にする回転と一致します。
辺12だけ位置を固定すれば辺34の位置も保存されるのでこれで十分です。この部分群の共役による同型についても、区別する辺を変えることで全く同様に表せます。
そしてもちろんこの図形を不変にする回転は正四面体も不変にします。
本質っぽくはないのですがちょっとだけ注意をしておくと、頂点に書いてある数字は頂点に呼び名をつける便宜的なものであってその頂点を区別して考えているということではないです。(もしそうだったら上の図形を保存する回転はなく、その群はとなってしまいます。)
の視覚化
今度は上図のように頂点1だけ別の点とみなしてあげるとこれを保存する回転の元の集合がとなります。
の視覚化
最後はちょっと変わっているのですがこのように辺12と辺34をこれらの中では区別せずに他の辺とは区別した図形を保存する回転の集合がとなります。
なので対辺の中点を結んだ直線での180度の回転を考えれば良いです。
正四面体群まとめ
以上のようにして正四面体群の部分群が視覚化できたわけですが、さらにいうとはの部分群ともみなせるのですがこれもが不変にする図形の対称性を一部なくすことによってが不変にする図形になることと確かに一致します。
最後に
ISerのカレンダーなのに数学の話しかしていないのは筆者がブログに書けるほど情報科学に精通していないせいですね。(まあ授業の内容の復習みたいなことを書いても良かったけど)
また、この記事を書き始めたときには正八面体群(立方体群と同型)についても視覚化を描こうとしていたのですが*4、CPU実験の進捗がヤバすぎるので今日はこのくらいで許してください。(使う図はもう作ってあるのですが、記事ってこんなに書くのに時間かかるんですね)
まあでも今現在(12/7 AM4:32)アドカレに一つ空きがあるからもしかしたら、、、、、って感じです。あんまり期待はしないでください。